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私の教育人生42(果てしなく遠い道)−5「文化経済学―ライフと富」池上惇
━━第42部━果てしなく遠い道━━
5「文化経済学―ライフと富」
━━━━━━━━━━━━━━━━━

文化経済学は、「生業と、そのシンボルを凝視することによって自分を変え、友を変え、世界を変えようとする。
大変、誠意のある、実践的な学問である。石田梅岩流に言えば、「実心実学」の姿である。 「文化経済学とは」という定義を試みよう。

 まず、この学問の研究対象を考える。
 それは、「文化を活かす生業と、そのシンボル化が世界を変える」こと、つまり、生業と、それが生み出すシンボルとの相互関係を研究対象にしている。

 従来の経済学とは、相当に違っている。
 従来の経済学は、社会における経済の動きを研究対象とし、そのなから一定の規則性や法則性を発見しようとした。
 文化経済学は、生業を支配する法則を探求はするが、これで終わりにはしない。

 生業を高める創意工夫や芸術的表現を追求して、その成果を「生業のシンボル」として評価し、それを生業に反映させ、それによって、生業の質を上げようとする。

これが文化経済学を生み出した人々の「文化の位置づけ」であり、
「世界の見方」、つまり、世界観である。
 例えば、文化経済学の創始人、
J.ラスキンは、「富」を定義して、つぎのようにいう。

 There is no wealth but life.
この定義は、文化経済学の本質を言い当てたものだ。
その意味は、次のとおりである。

「生業なくして、『富』は存在しない」
すなわち、「人間は、自分たちの持つ生命の‘潜在的な可能性’を活かして、仕事や生活を営んでいる。これ以外の生き方では、富が生まれることはありえない」と。

さらに、ラスキンは、生業は、必ず、「生業のシンボル」を生み出すと考えた。そして、その生み出されたシンボルを手がかりとして、あるいは、目標として、人々が、従来の生業を見直し、改革や改善を永続的に実行すれば、『富』が質的に高まり、量的にも増加するという。

では、「生業のシンボル」とは何か。

それは、「生活の芸術化」ともいうべき、人々が同意できる理念でもあり、「生業の中から生まれて、生業の目的となり課題となる象徴的な表現」である。

生活の芸術化は、決して、幻想ではない。それは、生業に基礎を置き、自然と共生する人間の労働と、創造の‘営み’を表現している。
生活の中の芸術を表現する上で、典型的な事例は、1884年、W.モリスが遺した一枚のスケッチである。

 そこには、19世紀後半のイギリス労働者階級の小住宅、狭小過密な居間が取り上げられて居る。次に、この居間を取り上げてみよう。
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