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私の教育人生42(果てしなく遠い道)−1「時空を超える生き方とは」池上惇

━━第42部━果てしなく遠い道━━
1「時空を超える生き方とは」
━━━━━━━━━━━━━━━━━


 暑い中、頭がぼうっとして、何となくテレビをみていると、大きな鰐の映像が眼に飛び込んできた。

「恐竜時代を乗り越えて最強の存在だった鰐も、小さくていつも巨大な生き物の陰に隠れて生き残ってきた哺乳類の進化にはかないませんでした。鰐は、地球を襲った大激震が収まって陸に上がった途端、最強の象徴であった大きな口や歯、強くて、長い尻尾などは、機敏に、賢く、急速に動き回る哺乳類には対抗できず、定着できませんでした。

これは、進化の過程で「特殊化」とよばれるもので、身体の機能や能生の構造が、水棲に適応しすぎて陸上での活躍に適応できなくなった事を示しています。」

「これに対して人類の祖先である哺乳類は、ねずみのようにはしっこく動き、四足で歩行し、胎盤で長期に子供を保存して脳の発達に場を提供し、前足を進化させて、手への途を開き、直立歩行の可能性を持って脳を発達させ、さらに、後ろ足を跳躍に活用して、機敏な活動を可能にしました。」
「様々な変化に対応して、機敏に行動できること、脳の進化によって、適切な判断ができること、これらは、哺乳類が変化に対応して生存できる条件となりました。‘特殊化’しないで、多様な変化への多様な適応性をもっていたこと、これが進化の鍵ですね。」

  解説者のご説明に納得しながら、いつしか、むかし、愛読した河上肇先生の『自叙伝』の一節を思い出した。先生は、いまでも、「マルクス主義者」という特殊な領域の思想家であると考えられていて、海外の研究者の著作にも、「マルクシスト」として扱われている。

しかし、先生ご自身は、自叙伝のなかで、「自分の特徴は‘真理を求める柔軟な心’にある」ことを指摘されていた。確かに、先生は、若い頃は、儒学、ラスキン、近代経済学、中年から、マルクス経済学、晩年は、老荘思想とラスキンへの回帰、などの「柔軟」な変化を体験された。まさに、特殊化の反対である。

「真理を求めて柔軟に思考し行動し、行動の結果から学習しては行動の型を変更」される。

 これは、無限の変化、進化の可能性を持つ思想であろう。

 その意味では、「真理を求める柔軟な心」は、時間と空間を越えて、先生の著作を読む人々の「心の糧」となりうる。

いま、市民大学院づくりに取り組んでいると、日本社会は、これだけの発展を遂げていながら、「固定化・骨化」された制度や、頭の固い人間によって政治、行政、学術などの世界が占められていることがわかる。

さらに、これらの世界だけではなくて、自分たちがともに歩み、ある意味では、教育のなかで、一生懸命に発達を支援してきたはずの各位にも、この圧力は浸透している。いつも、不徳だなあ、と感じる。私の生き方が未熟で、開かれた可能性が感じられなかったのだろう。

進化の可能性をいつも開いている生き方。今回は、このテーマを追いかけてみたい。
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