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池上惇(京都大学名誉教授/文化政策まちづくり大学院大学設立準備室室長)によるコラムです。
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池上惇 │ 私の教育人生 第36部 3 「新しい公共と質の高い労働」(2/20/'10)
今日の話題  2010年2月20日
池上 惇

━━第36部━日本型経営とは━━━━━━
私の教育人生 3 新しい公共と質の高い労働
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


昨日、走りながらのブログづくりであったから、改めてゆっくり読み
返してみると、自分の論旨に、不十分さが目立つ。
今日は、その補充である。

例えば、いわゆる‘新しい公共’の定義として、つぎのようにいう
ことができるだろうか、と、いう問題の提起をしてみよう。
「『新しい公共』とは、民間と政府のコラボレーションによる公共
サービスの供給と、公共負担の‘分担’のルールやシステムである」
と。

いま、全国の自治体で、公共施設、文化施設などにおける「指定管理
者制度」が導入され、実施されてきた。
例えば、公設の保育所を運営するのに、従来の直営では、公務員とし
ての保育士や栄養士を雇用する。
しかし、‘民間と政府のコラボレーションによる公共サービスの供給と、
公共負担の‘分担’のルールやシステム‘の一つとして位置づけられ
た「指定管理者制度」においては、市民参加制度の一環として、自治体
が基軸となって、指定管理者の公募を行う。
公募者の中から、提供しうる公共サービスの質、専門性の確保、従来の
実績や経験、組織としての持続性(従業員の社会保険制度への加入や、
賃金水準、労働条件などの確保等)を基準として審査が行われる。

私が知りえた範囲では、最も、典型的なのは、ワーカーズコープなど、
市民が自分たちで、5万円内外の出資金を出し合って、介護事業、病院
の清掃事業、などを協同組合型で行う組織が指定管理者となるケース
である。
つまり、公共サービスを民間が主体となって推進する非営利組織が
指定管理者となる。
これは、ある意味で、当然のことで、公共サービスは、通例は、営利事
業の採算に乗らないから、株式会社経営では手を出しにくい。
福祉事業などに、民間から株式会社形式で進出しても、必ずしもうま
くはゆかないのと同様であるのかもしれない。
ここのところ、大手の福祉事業会社が撤退を余儀無くされているが、
専門職者への待遇が悪すぎて、福祉サービスの水準が落ちてしまい、
利用者を失うようだ。
株式会社は配当を出すほどに、かなりの利益を挙げないと成り立た
ないシステムであるから、公共サービス領域に手を出すのは、かなり
難しい。
これに対して、非営利組織は、配当をおこなわないのが原則である。
年々の利益よりも、ひとり一人の人的能力に投資して、職人技を持ち、
人格的に高く、コミュニケーション能力を高めることに重点がある。
それは、非営利組織が、組合員の共通の利益を追求するとき、ワーカー
ズコープなど、労働主体に重点をおく協同の組織は、「協働」の価値を
高めることに組合員の利益の共通性を見出すからである。

「協働」というのは、一種の‘育ちあい’であって、自分たちで資金
を出し合って、自分たち自身を「人的能力」を持つものとして、自分た
ち自身に投資する組織である。配当よりも、自分たち自身の人的能力
を高めるために、投資する、となれば、その投資は一年などの単位
ではなくて、相当な長期間を想定することとなろう。
そして、ワーカーズコープの仕事が保育であれ、清掃であれ、公共サー
ビスを供給する事業となれば、「公共サービスの質を上げて社会に貢献
する」ことを通じて、「自分たちの労働の質を上げる」。
そして、質の高い労働が齎す「公正な創造・創業報酬」によって、自分
たちの生活の質を上げようとする。
この課題は、まだまだ、達成するのが難しく、大半の協同労働は質の
高さに比して、低い報酬に甘んじているが、そのうちに、必ず、この課題
を達成するだろう。

この場合、新しい公共の主体は、‘労働の質’を上げて公共サービスを
充実させようとする民間の非営利組織であり、自治体は、主体として
の位置から一歩下がって、公共の空間、場所を提供し、補助金を交付
し、公共サービスの内容を監査する「支援者・監督者」、イギリス流に
言えば、査察官( spectator )の立場に立つ。
査察官は高い学術的知識と、それを現場に活かした経験のある人格者
であるから、自治体は、合理的な報酬をもって、彼らを雇用しなけれ
ばならない。
公務員を修士や博士の学位取得者に高め、社会的に尊敬され租税をもっ
て待遇されるに相応しい人格とする必要があろう。
「従来は、政府が分業組織によって、単純化、標準化して供給して
いた公共サービス」を、「非営利組織などの総合性や専門性をもつ創造的
労働によって活性化し、公共サービスの質を上げて市民福祉・幸福の
向上に貢献する」。
これが、おそらくは、新しい公共の中身であろう。
指定管理者制度が、この目的のための唯一のものではないし、よりよい
「民間と政府のコラボレーション制度」が求められる。
従来の、公共企業体、政府、自治体、民間の共同出資会社、その他、
あらゆる官民連携の組織は、公務員としての査察官、民間人としての
高度専門職業人との関係の中で見直される。

このなかで、「直営として発展させるべきもの」「直営であればこそ
できる公共サービス」とはなにか。
それは、民間ではできない、長期に渡る調査研究、国際的な多様な
広範囲の調査研究、持続的な資金供給力や高度技術の活用が必要で、
科学者・技術者・芸術家の協力によって成り立つもの、成果は不確実
であるが、奨励を展望して、研究実験すべきものなどであろう。
そして、これらの議論の前提には、所得再分配のために、累進所得税
制度、最低所得保障制度、医療介護保険、年金、住宅などの「政府が
責任を持つ」広範囲の領域がある。
これなくしては、労働の質を上げること自体が困難である。
それを推進するための、公と民のコラボレーションは不可能であろう。

****************************

いつも、ブログをご愛読いただき有難う御座います。
私は今、文化政策大学院の設立に全力を挙げていますが、読者の皆様
にも、御関心をお持ちの各位に、と、いうことですが、ご賛同のお願
いを申し上げたく、お願いを掲載いたしました。
ご賛同の折には、ダウンロードの上、ご署名、ご郵送をお願い申し上
げます。
このご署名のお願いは、申請のために必要というきっかけではござい
ますが、本音としましては、申請という当面のことよりも、長い目で
見て、地元学研究のネットワークを広げ、多くの各位と、学術情報を
共有することを希望しております。
したがいまして、申請にはつかってくれるな、と、ご希望の向きには、
学術研究交流の目的以外には、ご住所など、使用いたしません。
申請への使用は遠慮するとのご希望の折は、そのむね、お書き添え
下さいますように。

*****************************

各位へのお願い            2010年2月7日
  文化政策・まちづくり大学院大学設立準備委員会代表者 池上 惇(京都大学名誉教授)
謹啓
 
 光の春の季節、おかわりございませんか。
 各位のご理解を得まして、文化政策大学院大学は、この3月末申請、2011年3月、開学を目ざして順調に準備を進めております。
 このたび、申請の経験者から、従来の事例では、「貴学(今回の申請は文化政策大学院大学)の設立の趣旨に賛同し、開学に際しては、知人等に、受験を推奨するとの、同意書」を、出来るだけ多く集め、提出するのがよいとの御助言をいただきました。
 私と致しましては、確かに必要なことと納得し、今後、ご理解を頂いております知人や、経営人などに、下記の同意書に、ご署名をお願いし、申請の際、文部科学省に提示させていただきたく、お差し支えなければ、何卒、ご賛同、ご協力のご署名を賜りますようお願い申し上げます。
              
                               謹白

同 意 書          2010年 月 日

 文化政策大学院大学の設立にあたって、その趣旨に賛同し、認可の場合には、入学を推奨して、貴学の発展に協力することに同意します。
 文化政策は、社会並びに各地に固有の文化資源を活かし、市民や経営人が主体となって国土、あるいは、当該地域の、ふるさと教育をはじめ、環境、福祉、産業などの総合的振興を図る構想である。
 この構想を社会人が通信制で学修することによって、各地で、貴重な文化資源を現代に活かす、市民の弛まざる努力が支えられ、これを通じて、景観、コミュニティ再生、産業振興、福祉文化等の創造的な発展が実現されることを期待する。
 また、認可後、各地の地元学研究に貢献しつつ、研究ネットワークが失業中の入学希望者等の経済状況にも配慮して、必要なとき、授業料等の分担を全国に呼びかけること、さらに、卒業生等が学位を得て地元大学等の教授となり、地元学の塾を開いて、次世代教育の場を拓き、大学院大学と連携して、地域再生を推進されるよう一層の努力を望みたい。

文化政策・まちづくり大学院大学設立準備委員会代表者  池上 惇 殿
       〒       住所
       職名または元職肩書
氏名                 サインまたは印鑑
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