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池上惇(京都大学名誉教授/文化政策まちづくり大学院大学設立準備室室長)によるコラムです。
できるだけ毎日の更新を目指しております。
皆様からのテーマのご希望も受け付けております。
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池上惇 │ 私の教育人生 第35部 10 「限界地域に塾を創る」(2/13/'10)
今日の話題  2010年2月13日
池上 惇

━━第35部━持続可能な創造型ストック━━━━━━
私の教育人生 10 限界地域に塾を創る
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


前回、
「一番困難な課題に挑戦してこそ、最高の価値あるものが生み出せる。」
と述べた。
この考え方を経済理論に表現して、いつか、ノーベル賞をもらおうか、
と、アホなことを考えている。

それは別にして、このアイディアに近い事を、ラスキンが、「この最後
のものにも」で指摘していた。凄い人だと思ったことがある。
彼が活躍した19世紀の後半には、J.S.ミルや、K.マルクスが
労働価値説を提唱していた。
それは、ある商品を生産するには、社会的平均的に評価される労働の
単位をいくつか積み上げる必要があり、この単位の合計で、商品の
価値が測定できる、というものである。
表面的に見ると、市場は、商品と貨幣の交換によって、成り立って
いる。
しかし、この現象の背後にある本質は、ある商品に投下された労働量、
ということになろう。
これにたいして、ラスキンは、最も、困難な仕事のために投下された
労働は、創造的なアイディアや、高い職人性、芸術性や機能性と一体
のものであって、この厳しいものに挑戦した労働こそが社会的見て、
評価基準であるべきであり、最も高い価値を持つと主張した。
社会的・平均的な基準ではなくて、最高のものに基準を置くとは、いか
にも、ラスキンらしいが、私も、この説に賛成である(池上惇『経済学
―理論・歴史・政策』青木書店、1991初版)。

私見では、市場といわれるものは、階層性があって、ラスキン的市場
と、ミル的な市場があるようだ。現代では、フェアトレードといわれ
る貿易や商業のシステムがあって、現地で、よいコーヒ豆を生産する
協同組合の生産物は、市価よりも高く取引される。
これは、一種の生産者保護制度で、欧米では、認証機関があって、これ
はフェアトレードであると、品質などを保証してくれる。
これを買う消費者は、金銭的判断ではなくて、倫理的な判断を優先し
てコーヒを買う。

このように、最も困難な課題に挑戦して生み出されたものは、コーヒー
に限らず、研究成果や調査結果、学術論文としても価値が高い。
この成果を評価して、成果を反映した、よい専門的な学術書を高く
買う習慣があれば良いのだが、これはなかなか難しい。
これを創り出すには、日常的に、多くの人々が研究活動を体験して、
創造的成果を享受する能力を高めねばならない。
酒代、タバコ代、間食費用、コンパ代、冠婚葬祭費を最小にして、
オカネを浮かし、高い本を買う。この習慣である。
この方法として、私が注目し、実践しようとしているシステム構築が
ある。

それは、文化政策大学院による通信制社会人ネットワークによって、
各地に、地元学などの塾が出来ることである。
この塾の先生は、文化政策学の修士または、博士の学位を持っている
か、一定の研究実績のある人々である。
通学の範囲は、地元中心に全国的な広がりを持つ。例えば、高知県の
過疎地であっても、その塾には、全国から社会人大学院生が通信制で、
共通のテキストをもって、現地と、郵便や旅行のついでに立ち寄り
ながら交流する。地元の小学生なども自由に出入りさせる。
私のような教員も、京都では、教員だが、高知へ行けば学生であり、
聴講料も払う。
全国から聴講生があつまれば、聴講料もかなりのものだろう。
共通費用の負担は大学院本部と話し合い、塾の取り分を地元に配分
する。
地元の失業、派遣などの社会人を京都での学習機会に月に一度くらい
は、派遣できよう。
そのうちに、高知の塾が立派な研究成果を出されて、出版されたり、
研究会をもたれ、それを映画化されたりすれば、そこに、全国から
読者や訪問者が流れてゆく。
この人流が新たな教育事業となるだろう。
出版の印税や地元での研修料などが市民経済を創り出す。
さらに、外食、宿泊、みやげ物、特産品などの市場が広がる。
これらをコミュニティ・ビジネスとして位置づければ良い。

塾が高知から神戸、名古屋、岐阜、長野、福島、北海道と、数が増え
て行けば、相互交流の機会が、高知―京都だけの場合とは、全く違って
きて、各地に、教育事業、交流事業が起こってくる。
農村と、都市の過疎地を繋ぐ塾ネットワーク。
ここから、国際的研究業績がうまれ、実力ある研究者が育ち、教育や
交流の機会が発展する。
多くの企業が各地で、経営人の塾を開かれ、多くの公務員が退職後に
塾を開く。
NPOはじめ、市民団体も後継者を育てつつ、塾によって、仕事を
起こし、地域を創り、人を育て、文化を高める。
これは、江戸時代の末期に比すべき偉大な「塾社会」日本の誕生で
ある。
当時は、識字率を高い水準に引き上げた。
今度は、仕事を起こし、地域を創り、人を育て、文化を高めるなかで
の創造的アイディアと、高いモラルが実現されるであろう。
市民経済学は、このための媒体として力を発揮してくれるに違いない。

****************************

いつも、ブログをご愛読いただき有難う御座います。
私は今、文化政策大学院の設立に全力を挙げていますが、読者の皆様
にも、御関心をお持ちの各位に、と、いうことですが、ご賛同のお願
いを申し上げたく、お願いを掲載いたしました。
ご賛同の折には、ダウンロードの上、ご署名、ご郵送をお願い申し上
げます。
このご署名のお願いは、申請のために必要というきっかけではござい
ますが、本音としましては、申請という当面のことよりも、長い目で
見て、地元学研究のネットワークを広げ、多くの各位と、学術情報を
共有することを希望しております。
したがいまして、申請にはつかってくれるな、と、ご希望の向きには、
学術研究交流の目的以外には、ご住所など、使用いたしません。
申請への使用は遠慮するとのご希望の折は、そのむね、お書き添え
下さいますように。

*****************************

各位へのお願い            2010年2月7日
  文化政策・まちづくり大学院大学設立準備委員会代表者 池上 惇(京都大学名誉教授)
謹啓
 
 光の春の季節、おかわりございませんか。
 各位のご理解を得まして、文化政策大学院大学は、この3月末申請、2011年3月、開学を目ざして順調に準備を進めております。
 このたび、申請の経験者から、従来の事例では、「貴学(今回の申請は文化政策大学院大学)の設立の趣旨に賛同し、開学に際しては、知人等に、受験を推奨するとの、同意書」を、出来るだけ多く集め、提出するのがよいとの御助言をいただきました。
 私と致しましては、確かに必要なことと納得し、今後、ご理解を頂いております知人や、経営人などに、下記の同意書に、ご署名をお願いし、申請の際、文部科学省に提示させていただきたく、お差し支えなければ、何卒、ご賛同、ご協力のご署名を賜りますようお願い申し上げます。
              
                               謹白

同 意 書          2010年 月 日

 文化政策大学院大学の設立にあたって、その趣旨に賛同し、認可の場合には、入学を推奨して、貴学の発展に協力することに同意します。
 文化政策は、社会並びに各地に固有の文化資源を活かし、市民や経営人が主体となって国土、あるいは、当該地域の、ふるさと教育をはじめ、環境、福祉、産業などの総合的振興を図る構想である。
 この構想を社会人が通信制で学修することによって、各地で、貴重な文化資源を現代に活かす、市民の弛まざる努力が支えられ、これを通じて、景観、コミュニティ再生、産業振興、福祉文化等の創造的な発展が実現されることを期待する。
 また、認可後、各地の地元学研究に貢献しつつ、研究ネットワークが失業中の入学希望者等の経済状況にも配慮して、必要なとき、授業料等の分担を全国に呼びかけること、さらに、卒業生等が学位を得て地元大学等の教授となり、地元学の塾を開いて、次世代教育の場を拓き、大学院大学と連携して、地域再生を推進されるよう一層の努力を望みたい。

文化政策・まちづくり大学院大学設立準備委員会代表者  池上 惇 殿
       〒       住所
       職名または元職肩書
氏名                 サインまたは印鑑
            




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