2010.01.30 Saturday
池上惇 │ 私の教育人生 第35部 4 「創造的アイディアの源泉―敗者の集合」(1/30/'10)
今日の話題 2010年1月30日
池上 惇
━━第35部━持続可能な創造型ストック━━━━━━
私の教育人生 4 創造的アイディアの源泉―敗者の集合
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
創造型経営についてのヒアリングや学習を続けていて、ふと思うこと
がある。
それは、経営者と呼ばれている人々の大半が、いわゆる経営学を全く
信用しておられない、あるいは、信用すると、経営がうまくゆかない
のではないか、と、考えておられることである。
私ども、学者と言われているものにとっては、ショックなことであった。
では、何が信用できるのか、ということになる。
答えは明快で、ある‘我流の’経営理論に基づいて経営してみて、企業
が実際に倒産しないで、再生産または拡大再生が持続的に行われている
か、どうか、を点検しながら進むということであった。
この‘我流’のものは、メモであったり、自費印刷の小冊子であったり、
研修のための講演の記録だったりする。
それらを読ませていただき、ヒアリングで補ってみると、今までの経営
理論にはない、まさに、「創造的」というべき内容が、しばしば、含まれ
ている。
そして、‘創造的’なものの中身は、意外なことであるが、従来の経済学
では未開拓であった領域を積極的に、解明したものが多いのである。
例えば、以前、中澤代表取締役の経営理論をご紹介したことがある。
ヒアリングのなかで、氏は「企業の枠を超えて、知的財産権、特許権
あるいは、出願しない知的財産を、関係者が共有するなかで、互いの
位置取りを、それぞれが自覚しながら‘分担すべきところを分担し’、
‘協働すべきところを協働する’」「信頼関係と‘支えあい’を基本と
し、勝者と敗者を作らない経営」「敗者の側のよさを認める経営」を進め
られていた。
この企業の社員の中にも、山岡鉄舟のような維新の敗者に興味を持って
研究される方もある。
確かに、後世や次世代まで、影響力を残した人物は、明治維新の敗者に
多い。
暗殺されたものを含めれば、大半が敗者の思想や行動である。
勝海舟、阪本龍馬、西郷隆盛など、どうしてこうも立派な人物が敗者
となるのだろう。ニューリーの新井会長のお話でも、ご本人が退職を
繰り返さざるを得なかった敗者であるが、その敗者の側に最も優れた技術者たちが結集して智恵の森というべき集団を育てられた。
一昨日、小林俊和先生と、遅い夕食を食べながら、posシステムを
入れた書店と、売れないものを総べて揃える書店との違いを議論していた。
小林「posをいれた書店は大体、だめになります。」
池上「確かに。大手の京都店が撤退しましたね。むかしは、そこへゆく
と、何でもあったので、便利だったのですが、撤退前は、資格を取る
ための本とか、旅行用の本は一杯あるのに、学術的なものは極少数で
した。売れないものでも価値があると思えば売る努力をすれば買う人
も出る。ネット上のアマゾンでは、売れない希少本がでていますよ。」
小林「売れない本には、二種類あって、内容が良くないものと、内容が
良いが流行ではないものです。流行でないものの中に‘本物’がある
と思いますね。」
池上「確かに、敗者の立場に立つと、勝ち馬に乗るような流行の雰囲気
ではなくて、本物を見つけて力をあわせよう、みんなで、抵抗し、守り
あって、よいものを創ってゆこう、という気になります。命を大事に
し合って、支えあおう、という、ことでしょうか。」
小林「先生は、よく、‘もう一つのアメリカ’‘もう一つの日本’という
言い方をされますが、私から見ると、‘勝ち組のアメリカ’対、‘負け組
のアメリカ’という気がします。」
池上「なるほど。でも、真の勝者は、ことによると負け組みのほうに多く
いるかもしれませんね。流行で勝つのと、実力で勝つ、とは、違います
からね。」
小林「経営の世界でも、‘pos式の経営’と、その逆をゆく‘売れない
ものを集めて、創造的雰囲気を持つ経営にする’という二つのタイプ
があるのでしょう。流行から見てマイナスのものを集めて、何倍もの
プラスにするためには、何か、条件がいるのではありませんか。」
池上「最近、小林さんが着目しておられる‘ドメイン’という概念が、
それに当たるかもしれません。地域固有の、よき伝統や習慣を創造的
に継承できる人間ネットワーク、それによって維持し再生されている、
文化財、文化産業、「学術文化財」、生活文化様式、学校、塾などです。
それらは、固有の「場」における人に体化された‘目に見えない’文化
資本と、モノや制度に担われた‘目に見える’文化資本の結合された
もの、です。
これまで、ヒアリングさせていただいた方々、それぞれに、非常に厚み
のある、人間ネットワークと、それを活かす場をお持ちのようでした。
私たちも、よい大学院大学をつくろうと思うと、ドメインをしっかり
構築しておかないと。本当に、教えられました。」
池上 惇
━━第35部━持続可能な創造型ストック━━━━━━
私の教育人生 4 創造的アイディアの源泉―敗者の集合
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
創造型経営についてのヒアリングや学習を続けていて、ふと思うこと
がある。
それは、経営者と呼ばれている人々の大半が、いわゆる経営学を全く
信用しておられない、あるいは、信用すると、経営がうまくゆかない
のではないか、と、考えておられることである。
私ども、学者と言われているものにとっては、ショックなことであった。
では、何が信用できるのか、ということになる。
答えは明快で、ある‘我流の’経営理論に基づいて経営してみて、企業
が実際に倒産しないで、再生産または拡大再生が持続的に行われている
か、どうか、を点検しながら進むということであった。
この‘我流’のものは、メモであったり、自費印刷の小冊子であったり、
研修のための講演の記録だったりする。
それらを読ませていただき、ヒアリングで補ってみると、今までの経営
理論にはない、まさに、「創造的」というべき内容が、しばしば、含まれ
ている。
そして、‘創造的’なものの中身は、意外なことであるが、従来の経済学
では未開拓であった領域を積極的に、解明したものが多いのである。
例えば、以前、中澤代表取締役の経営理論をご紹介したことがある。
ヒアリングのなかで、氏は「企業の枠を超えて、知的財産権、特許権
あるいは、出願しない知的財産を、関係者が共有するなかで、互いの
位置取りを、それぞれが自覚しながら‘分担すべきところを分担し’、
‘協働すべきところを協働する’」「信頼関係と‘支えあい’を基本と
し、勝者と敗者を作らない経営」「敗者の側のよさを認める経営」を進め
られていた。
この企業の社員の中にも、山岡鉄舟のような維新の敗者に興味を持って
研究される方もある。
確かに、後世や次世代まで、影響力を残した人物は、明治維新の敗者に
多い。
暗殺されたものを含めれば、大半が敗者の思想や行動である。
勝海舟、阪本龍馬、西郷隆盛など、どうしてこうも立派な人物が敗者
となるのだろう。ニューリーの新井会長のお話でも、ご本人が退職を
繰り返さざるを得なかった敗者であるが、その敗者の側に最も優れた技術者たちが結集して智恵の森というべき集団を育てられた。
一昨日、小林俊和先生と、遅い夕食を食べながら、posシステムを
入れた書店と、売れないものを総べて揃える書店との違いを議論していた。
小林「posをいれた書店は大体、だめになります。」
池上「確かに。大手の京都店が撤退しましたね。むかしは、そこへゆく
と、何でもあったので、便利だったのですが、撤退前は、資格を取る
ための本とか、旅行用の本は一杯あるのに、学術的なものは極少数で
した。売れないものでも価値があると思えば売る努力をすれば買う人
も出る。ネット上のアマゾンでは、売れない希少本がでていますよ。」
小林「売れない本には、二種類あって、内容が良くないものと、内容が
良いが流行ではないものです。流行でないものの中に‘本物’がある
と思いますね。」
池上「確かに、敗者の立場に立つと、勝ち馬に乗るような流行の雰囲気
ではなくて、本物を見つけて力をあわせよう、みんなで、抵抗し、守り
あって、よいものを創ってゆこう、という気になります。命を大事に
し合って、支えあおう、という、ことでしょうか。」
小林「先生は、よく、‘もう一つのアメリカ’‘もう一つの日本’という
言い方をされますが、私から見ると、‘勝ち組のアメリカ’対、‘負け組
のアメリカ’という気がします。」
池上「なるほど。でも、真の勝者は、ことによると負け組みのほうに多く
いるかもしれませんね。流行で勝つのと、実力で勝つ、とは、違います
からね。」
小林「経営の世界でも、‘pos式の経営’と、その逆をゆく‘売れない
ものを集めて、創造的雰囲気を持つ経営にする’という二つのタイプ
があるのでしょう。流行から見てマイナスのものを集めて、何倍もの
プラスにするためには、何か、条件がいるのではありませんか。」
池上「最近、小林さんが着目しておられる‘ドメイン’という概念が、
それに当たるかもしれません。地域固有の、よき伝統や習慣を創造的
に継承できる人間ネットワーク、それによって維持し再生されている、
文化財、文化産業、「学術文化財」、生活文化様式、学校、塾などです。
それらは、固有の「場」における人に体化された‘目に見えない’文化
資本と、モノや制度に担われた‘目に見える’文化資本の結合された
もの、です。
これまで、ヒアリングさせていただいた方々、それぞれに、非常に厚み
のある、人間ネットワークと、それを活かす場をお持ちのようでした。
私たちも、よい大学院大学をつくろうと思うと、ドメインをしっかり
構築しておかないと。本当に、教えられました。」






