2010.01.27 Wednesday
池上惇 │ 私の教育人生 第35部 2 「リスク分散の経済学を発見」(1/27/'10)
今日の話題 2010年1月27日
池上 惇
━━第35部━持続可能な創造型ストック━━━━━━
私の教育人生 2 リスク分散の経済学を発見
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前回、「創造」というと、非日常的で突飛なことのように思いがちだ。
伝統や習慣の対極にあると考えるのが普通であろう。
しかし、ラスキンは、逆に「人間の日常の‘営み’が『価値のある
もの』を創造し、それらを共有して、人から人へと伝えてゆく、と考える。
その『価値のあるもの』を後世の‘目利き’が発見し、現代生活に
再生する。
いわば、人類は{創造の種子}を絶えず学習などによって人から人へ
と受け渡し『再生』してゆくのである。
同時に、この『受けわけ渡し』は、荒野のような非文化的環境で行わ
れるのではない。
受け渡すには、渡される側の「享受能力」を育てる場や時間が必要で
あるし、創造と享受の関係に相応しい人間的な雰囲気やモラルが必要
である。
それは、互いの人格や創造性を尊重しあい、知的な資産として、大切に
し、感謝しながら、知識として共有し、ともに、活かすことである。」
と、述べた。
今日は、ラスキンから一足飛びに日本のものづくり現場に飛ぶ。
ここのところ、東京都との往復に時間を取られて更新が後れました。
お許しを。
さて、この間、何を考え、何をしていたのか。
どなたにあってなにを教えて頂いていたのか。
新たなアイディアを、発見したり、誕生させたり出来たのであろうか。
いつも、反省させられるのは、「やるべきときに、やるべきことができ
ていない」ということである。
とりわけ、大学院大学の設立活動を推進すると言うことになれば、多く
の各位に、活動の意味を訴えて、ご説明をし、各位のお考えや状況に
応じて、様々な御提案をし、各位のお役にも立って、また、私どもの
活動にも、ご理解やご支援をいただけるように配慮しなければならない。
おひとり、おひとりにご説明し、ご支援には御礼を申上げ、活動の成果
をご報告しながら、その成果が御ひとり御ひとりに役立つよう、適切な
内容を選択してお送りすることになる。
これは、思ったよりも、遥かに大変な、仕事であった。
今日も、早速にお手紙を差し上げて、と、心の中では焦りながら、やはり、
「今日の話題」などのブログから始めてしまう。
なにか、ブログを書かないと、今日いうべきこと、今日でなければ
ならないことを、し残してご説明にも迫力がでてこないように思うのだ。
今日の事例は、以前、ご報告したニューリー株式会社の会長からの
もので
ある。
先に、ご紹介したように、4時間ばかりの長時間、人生をかけて経営
してこられた貴重なお話であった。
内容は、ラスキンの発見を超えたかもしれない、素晴らしいもので
あったので、少しは、重複するが、改めて。
池上「以前にもご紹介しましたが、ニューリーが開発された技術は
経済産業省から表彰されたそうですね。おめでとうございます。」
会長「いや、有りがたいことですが、私どもとしましては、今回の
スキャメラ技術に限らず、絶えず、他社が挑戦して投げ出した難題
ばかりを手がけて解決してきました。その意味では、ひとつでも、
世間から認められて嬉しく思っています。」
池上「‘難題への絶えざる挑戦’と、伺っていますが、そのような難題
を貴社が解決できて、製品化できるというのは、まさに、創造型経営
のモデルと言えますが、なぜ、難題が解決できるのか、御教え頂け
ますか。」
会長「そうですね。私の苦労人生の結果でしょう。わたくしは、自分の
生き方として、絶えず、新たな技術を開発しては、顧客の要望に応え
ようとしてきました。これは、一面では、技術者としての誇りであり、
他面では、顧客のお陰でご注文をいただいて、生きさせて頂いている
わけですから、恩に報いるというか、よいものを生み出して御慶び頂く
というか、その様な気持なのです。
ところが、このような気持で、よいものをつくると、理解ある経営者
には、重んじて頂けますが、‘俺の言うことを聞け’式の方とは必ずと
言ってよいほど、衝突するのです。 残念ですが、日本の企業には、この
式の経営者が多い。当然のこと、退職せねばならないことになります。」
池上「大変なご苦労でしたね。そのなかで、とくに、気をつけられた
のは、どのような点ですか。」
会長「やめるとなると、私に賛成の技術者が一緒に行動します。
また、倒産する会社もありますから、会社を再建するために、組合の
責任者もやったことがあります。再建すると元の経営者に経営権を返
しますね。すると、また、駄目になることもある。その会社の人々が
ついてきてくれる。大体倒産すると大学では逃げてしまいますから、
学歴はないが技術に強く、誠実な人が残ります。
これらの人々が集って出来た会社ですから、一種の、全員参加型の
経営になる。
経理は全て公開で、経営者は、交際費を使わない。税務署から少なす
ぎる、と、言われるくらいです。資金、小切手、通帳は、すべて銀行
に預けて、個人の関わりは最小必要な限度とする。」
池上「これは凄い経営ですね。そうなってくると、‘社員ひとりひとり
が会社の貴重な財産’ですね。」
会長「そうですよ。できるだけ、常勤を増やして、生涯働けるように
し、子育てや、個人生活への配慮も必要です。私どもは、全員で、研究
開発に取り組む姿勢がないと、やって行けませんから、事務職だって、
研究開発に興味を持ってもらうし、提案も大歓迎です。」
池上「そうしますと、このような土台の上で、とくに、困難な研究開発
の『難題』に、たちむかって解決できるわけは何でしょうか。」
会長「共通の土台は、一種の信頼関係でしょうかね。その上で、採算を
無視して、難しい課題に対する研究開発の機会には、積極的に応じる
こと、大手からの試作の注文でも、政府からの研究開発費でも同様です。
難題に挑戦すると、その度に、関係した技術者には、その難題に関わる
研究開発の経験知が蓄積されます。いくつもの難題に関わるほど、多く
の経験知が個々人や集団に蓄積され、多様な難題に、多様な形で対応
できるようになるのです。これは、大事なことだと思いますよ。
採算を無視した研究開発は一種の社会貢献でしょうね。社会にとって
は、新たな経験知がもたらされるのですから。同時に、この社会貢献
こそが、ひとりひとりの技術者にとっての‘創造能力の基盤形成’なの
ですよ。」
池上「納得しました。では、このような創造型経営は、経営の持続性
や安定性という点から見ると、どのように評価しておられますか。」
会長「端的に言うと、‘多様な課題を解決して行くと、多様な注文に
応える企業体質が出て来る’ことです。たとえば、難題を解決して、
採算の取れる事業化に成功したものが10あれば、あるものが採算上、
危なくなっても、別の事業で持ちこたえる。
いまのような大不況の折には、特にそうですね。流行り言葉風にいえ
ば、『リスク分散型マネジメント』かもしれません。
池上「これは、素晴らしい。リスクの大きい研究開発に挑戦すればする
ほど、多様な事業に挑戦できて、その上に、事業のリスクを分散できる
とは。まさに、創造型経営ですね。」
会長「そんな、おおそれたものではありません。さらに、大きな困難
もありますから。それは、事業の多様性に応じた市場開発の難しさ
ですね。スキャメラなど、その典型ですが、文化財や動物、景観など
のスキャン需要は潜在的には、非常に大きいのですが、文化財のよう
に専門性の高い分野での御活用は、専門家のご理解がないと難しい。
しかし、専門家の世界は、それはそれで、従来のお付き合いやら、学術的
なネットワークやら、多様な要素が絡んでいて、普通の製品やサービス
のようにはゆきません。人間としての生き方や、節度、経営理念、正しい
と思うことを主張する勇気などが問われます。ただ、創造型技術等を
評価して頂いて、それが、文化財の保存や活用に役立ったときの嬉し
さは例えようもないほど大きなものです。それを楽しみにやっている
ようなもので、普通のビジネスではありません。」
池上「普通のビジネスでない、ビジネス。これは、創造型経営の本質
かもしませんね。この‘リスクを取りながらリスクを分散する経営シス
テム’は、経済学では、ノーベル賞級の発見ですよ。アイディアは、この
ブログで公表されていますので、すでに、学術的な成果と、認められ
るのではないか。今後も、大事にされて、できれば、文字情報として
貴名で公表されるようお薦めします。受賞の際には、スエーデン旅行
などで、社員をねぎらっていただきたく。今日は、ありがとうござい
ました。」
池上 惇
━━第35部━持続可能な創造型ストック━━━━━━
私の教育人生 2 リスク分散の経済学を発見
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前回、「創造」というと、非日常的で突飛なことのように思いがちだ。
伝統や習慣の対極にあると考えるのが普通であろう。
しかし、ラスキンは、逆に「人間の日常の‘営み’が『価値のある
もの』を創造し、それらを共有して、人から人へと伝えてゆく、と考える。
その『価値のあるもの』を後世の‘目利き’が発見し、現代生活に
再生する。
いわば、人類は{創造の種子}を絶えず学習などによって人から人へ
と受け渡し『再生』してゆくのである。
同時に、この『受けわけ渡し』は、荒野のような非文化的環境で行わ
れるのではない。
受け渡すには、渡される側の「享受能力」を育てる場や時間が必要で
あるし、創造と享受の関係に相応しい人間的な雰囲気やモラルが必要
である。
それは、互いの人格や創造性を尊重しあい、知的な資産として、大切に
し、感謝しながら、知識として共有し、ともに、活かすことである。」
と、述べた。
今日は、ラスキンから一足飛びに日本のものづくり現場に飛ぶ。
ここのところ、東京都との往復に時間を取られて更新が後れました。
お許しを。
さて、この間、何を考え、何をしていたのか。
どなたにあってなにを教えて頂いていたのか。
新たなアイディアを、発見したり、誕生させたり出来たのであろうか。
いつも、反省させられるのは、「やるべきときに、やるべきことができ
ていない」ということである。
とりわけ、大学院大学の設立活動を推進すると言うことになれば、多く
の各位に、活動の意味を訴えて、ご説明をし、各位のお考えや状況に
応じて、様々な御提案をし、各位のお役にも立って、また、私どもの
活動にも、ご理解やご支援をいただけるように配慮しなければならない。
おひとり、おひとりにご説明し、ご支援には御礼を申上げ、活動の成果
をご報告しながら、その成果が御ひとり御ひとりに役立つよう、適切な
内容を選択してお送りすることになる。
これは、思ったよりも、遥かに大変な、仕事であった。
今日も、早速にお手紙を差し上げて、と、心の中では焦りながら、やはり、
「今日の話題」などのブログから始めてしまう。
なにか、ブログを書かないと、今日いうべきこと、今日でなければ
ならないことを、し残してご説明にも迫力がでてこないように思うのだ。
今日の事例は、以前、ご報告したニューリー株式会社の会長からの
もので
ある。
先に、ご紹介したように、4時間ばかりの長時間、人生をかけて経営
してこられた貴重なお話であった。
内容は、ラスキンの発見を超えたかもしれない、素晴らしいもので
あったので、少しは、重複するが、改めて。
池上「以前にもご紹介しましたが、ニューリーが開発された技術は
経済産業省から表彰されたそうですね。おめでとうございます。」
会長「いや、有りがたいことですが、私どもとしましては、今回の
スキャメラ技術に限らず、絶えず、他社が挑戦して投げ出した難題
ばかりを手がけて解決してきました。その意味では、ひとつでも、
世間から認められて嬉しく思っています。」
池上「‘難題への絶えざる挑戦’と、伺っていますが、そのような難題
を貴社が解決できて、製品化できるというのは、まさに、創造型経営
のモデルと言えますが、なぜ、難題が解決できるのか、御教え頂け
ますか。」
会長「そうですね。私の苦労人生の結果でしょう。わたくしは、自分の
生き方として、絶えず、新たな技術を開発しては、顧客の要望に応え
ようとしてきました。これは、一面では、技術者としての誇りであり、
他面では、顧客のお陰でご注文をいただいて、生きさせて頂いている
わけですから、恩に報いるというか、よいものを生み出して御慶び頂く
というか、その様な気持なのです。
ところが、このような気持で、よいものをつくると、理解ある経営者
には、重んじて頂けますが、‘俺の言うことを聞け’式の方とは必ずと
言ってよいほど、衝突するのです。 残念ですが、日本の企業には、この
式の経営者が多い。当然のこと、退職せねばならないことになります。」
池上「大変なご苦労でしたね。そのなかで、とくに、気をつけられた
のは、どのような点ですか。」
会長「やめるとなると、私に賛成の技術者が一緒に行動します。
また、倒産する会社もありますから、会社を再建するために、組合の
責任者もやったことがあります。再建すると元の経営者に経営権を返
しますね。すると、また、駄目になることもある。その会社の人々が
ついてきてくれる。大体倒産すると大学では逃げてしまいますから、
学歴はないが技術に強く、誠実な人が残ります。
これらの人々が集って出来た会社ですから、一種の、全員参加型の
経営になる。
経理は全て公開で、経営者は、交際費を使わない。税務署から少なす
ぎる、と、言われるくらいです。資金、小切手、通帳は、すべて銀行
に預けて、個人の関わりは最小必要な限度とする。」
池上「これは凄い経営ですね。そうなってくると、‘社員ひとりひとり
が会社の貴重な財産’ですね。」
会長「そうですよ。できるだけ、常勤を増やして、生涯働けるように
し、子育てや、個人生活への配慮も必要です。私どもは、全員で、研究
開発に取り組む姿勢がないと、やって行けませんから、事務職だって、
研究開発に興味を持ってもらうし、提案も大歓迎です。」
池上「そうしますと、このような土台の上で、とくに、困難な研究開発
の『難題』に、たちむかって解決できるわけは何でしょうか。」
会長「共通の土台は、一種の信頼関係でしょうかね。その上で、採算を
無視して、難しい課題に対する研究開発の機会には、積極的に応じる
こと、大手からの試作の注文でも、政府からの研究開発費でも同様です。
難題に挑戦すると、その度に、関係した技術者には、その難題に関わる
研究開発の経験知が蓄積されます。いくつもの難題に関わるほど、多く
の経験知が個々人や集団に蓄積され、多様な難題に、多様な形で対応
できるようになるのです。これは、大事なことだと思いますよ。
採算を無視した研究開発は一種の社会貢献でしょうね。社会にとって
は、新たな経験知がもたらされるのですから。同時に、この社会貢献
こそが、ひとりひとりの技術者にとっての‘創造能力の基盤形成’なの
ですよ。」
池上「納得しました。では、このような創造型経営は、経営の持続性
や安定性という点から見ると、どのように評価しておられますか。」
会長「端的に言うと、‘多様な課題を解決して行くと、多様な注文に
応える企業体質が出て来る’ことです。たとえば、難題を解決して、
採算の取れる事業化に成功したものが10あれば、あるものが採算上、
危なくなっても、別の事業で持ちこたえる。
いまのような大不況の折には、特にそうですね。流行り言葉風にいえ
ば、『リスク分散型マネジメント』かもしれません。
池上「これは、素晴らしい。リスクの大きい研究開発に挑戦すればする
ほど、多様な事業に挑戦できて、その上に、事業のリスクを分散できる
とは。まさに、創造型経営ですね。」
会長「そんな、おおそれたものではありません。さらに、大きな困難
もありますから。それは、事業の多様性に応じた市場開発の難しさ
ですね。スキャメラなど、その典型ですが、文化財や動物、景観など
のスキャン需要は潜在的には、非常に大きいのですが、文化財のよう
に専門性の高い分野での御活用は、専門家のご理解がないと難しい。
しかし、専門家の世界は、それはそれで、従来のお付き合いやら、学術的
なネットワークやら、多様な要素が絡んでいて、普通の製品やサービス
のようにはゆきません。人間としての生き方や、節度、経営理念、正しい
と思うことを主張する勇気などが問われます。ただ、創造型技術等を
評価して頂いて、それが、文化財の保存や活用に役立ったときの嬉し
さは例えようもないほど大きなものです。それを楽しみにやっている
ようなもので、普通のビジネスではありません。」
池上「普通のビジネスでない、ビジネス。これは、創造型経営の本質
かもしませんね。この‘リスクを取りながらリスクを分散する経営シス
テム’は、経済学では、ノーベル賞級の発見ですよ。アイディアは、この
ブログで公表されていますので、すでに、学術的な成果と、認められ
るのではないか。今後も、大事にされて、できれば、文字情報として
貴名で公表されるようお薦めします。受賞の際には、スエーデン旅行
などで、社員をねぎらっていただきたく。今日は、ありがとうござい
ました。」






